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四葉のクローバー/晴れの国岡山から

ワンワンになる

 突然たっくんが、よつんばいになってノソノソと歩きだした。バーチャンに近寄ってきて「ワンワン、ワンワン」と、言う。バーチャンは首を傾げて「あれ、急に犬になったの」と、聞く。
 ママが言う。「甘えたい時には、ワンワンになるみたいです」
「へえ、そうなの。よしよし、ワンワンだっこしたげる」
 たっくんは、ほんわかーとした笑顔になってバーチャンの膝の上に据わる。二歳半を過ぎるとなんだか急に重くなった気がする。食事も大人の半分くらいは食べていそうだ。
「ワンワン、よしよし、かわいいなー」
「ワンワン、ワンワン」手足を曲げて犬になりきっている。
 六ヶ月前に弟ができてから、たっくんはママを取られた。かわいい赤ちゃんの誕生は嬉しいけれど、こんなにママを独り占めにするなんて想像できなかったよね。ママも忙しくてゆっくりたっくんの相手ができないよね。
愛のエネルギーが足りなくなったら、せいぜいワンワンになって補ってね、たっくん。
 たっくんは、犬が大好きだ。お隣さんの庭には、五十センチ大の犬の置物がある。やっと歩き始めた頃、この置物の犬が気にいってよくジーチャンと見に行った。
 さんぽをしていると、よくさんぽ中の犬に出会う。むやみに近付いて噛まれても爪をたてられてもいけないので、なるべくたっくんを犬に近寄らせないようにする。
 ある時、親切なおじさんに出会った。たっくんが、犬が好きらしいのを察知したおじさんは、「ワンワンに触ってみ」と、言ってくれた。先にバーチャンが犬の背中をなでなでして見せる。
「たっくんもやってみ、こうしてなでなで」
 黙って恥ずかしそうにしている。おじさんは触らないのかと思い歩き始めた。おじさんが五、六歩進んだところで、たっくんが叫んだ。
「ワンワンにさわるー」
 おじさんは帰ってきて自慢の犬に触らせてくれた。たっくんは、めでたく犬の初触りの体験ができのだった。

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